西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

 
  ヨシ博物館とは? 
第110回

ヨシこれだ!というヨシビジネスの可能性

2004年7月8日 菱川貞義

 「食べられるヨシ」の商品化には大いに期待できるところ(ヨシはビタミンCを豊富に含むなど健康食品としても魅力十分)ですが、ほかの「ヨシの活用」の取り組みはどんな具合なのでしょうか?

 実は昨年秋(2003年11月5日)にヨシ利用シンポジウム(淡海環境保全財団創立十周年記念事業)が長浜バイオ大学で開催され、ヨシ博物館館長の西川嘉廣さんをはじめ、伴一郎さん(大阪の伴ピーアール株式会社社長、ヨシ紙「レイクパピルス」などヨシ商品を数々開発中)、熊谷秋雄さん(宮城県北上町で家業の伝統的な茅葺きに従事しながら、新住居用素材としての茅葺きにも挑んでいる)、田井中文彦さん(淡海環境保全財団)、ヘンク・シーボルト・ホーリングスさん(オランダヨシ葺き協会理事長、職人の技術向上に取り組みながらヨシを広くPRしている)により、「将来のヨシビジネスについて」という題でパネルディスカッションがありました。

 その様子を収録した冊子「明日の淡海vol.10(淡海環境保全財団発行)」をヨシ博士から見せていただきました。ヨシ活用の現状もわかりやすく解説されているので少し紹介します。

琵琶湖ヨシ腐葉土
 菊づくりのプロがヨシでつくった腐葉土で好成績をあげていることに注目して淡海環境保全財団が開発。ヨシ腐葉土は、透水性・通気性に優れ、根張りがよくなり、根腐れの心配もない高品質商品として人気が高い。

 田井中さんによると、「一袋500円前後で、日本人がつくるとどうしても高くなってしまうのと、いまのところ腐葉土に大きな需要がなく、高級志向、環境志向のユーザーをターゲットにしているというのが現状」ということです。

ヨシ紙
 ヨシを使った紙は名刺などによく使われるようになってきましたが、一般紙に比べてどうしても高くなってしまうので、まだ大量には生産されていません。しかし、伴さんも「印刷するとインクが馴染みやすく、柔らかみが生まれる」とおっしゃっているように、ヨシ紙はとても味わい深いものです。

ヨシを使った
茅葺き

 日本では建築基準法第22条により、「家を建てるときには不燃材料で屋根を葺かなければならない」という規定があり、新しく建てられるのは10平方メートル以内の小さな建物ぐらいでビジネスにはなりません。

 しかし、ホーリングスさんによると、「オランダでは、屋根が2時間以上燃えても住宅の内部構造にダメージが及ばなければいいという考え方をしています」ということで、オランダでは毎年五千戸以上のヨシ葺き住宅(うち三千戸は新築)が建築されています。

 そして、西川さんは「火事がおこってから2時間もあれば住宅から避難できるだろう。それに現代では、火事になったときに死亡にいたる原因はたいてい火よりも有害な煙だと思う」とおっしゃっています。

ヨシ松明
 大津市では市民が自分たちで刈り取ったヨシを使って松明をつくり、琵琶湖畔で燃やすというイベントがあり、東近江水環境自治協議会でも、役目の終えたヨシ舟を松明にして燃やすイベントを行っています。西川さんは、「近江八幡市では、ヨシを使った松明まつりが国選抜の無形民俗文化財に登録されています。ヨシを観光資源として活用するという考え方はおもしろいですね」とコメントされています。

固形燃料
 熊谷さんによると、「中国では燃料として使用しています」

建築部材
 また、「ドイツでは、ヨシを使った断熱材が人気を集めていて、日本でもなんとか建築部材として普及させていこうと努力しているところ」とのこと。

 西川さんはディスカッションの最後に、「環境の時代を迎えたいま、ヨシはグローバルな視点から、大切な植物だといわれるようになりました。それは、本来、ヨシが持っている水質浄化能力や生態系保全の役割があらためて見直されるようになったからだと思います。ぜひ、このパネルディスカッションを参考にしていただき、ヨシをビッグビジネスにつなげるヒントとしていただきたいですね」と締めくくられました。

 これは、むかし、西川嘉右衛門商店で売られていた「ヨシの灰」の広告です。油落としに使っていたんですね。いますぐにでも、ヨシのボディシャンプーなんかもできそうですね。
(つづく)