第19回
2001年12月13日 菱川貞義
よくかんで食べる
 自然農法に取り組んでおられる仲岸さんから、「無農薬の米は玄米でも安全でおいしい。しかも玄米は栄養豊富で白米に比べて固いから、よくかんで食べることになり、はやく満腹信号が出るので食べる量も少なくて済む。だから、高価格の米でもくらしの中では案外安くつく。」というお話を伺いました。
 
 なるほど、こんなふうに考えると、高いと思われる米も一転逆転して安くなってしまったりするんだな。と感心してしまった。
 
 と、同時に“よくかんで食べる”という言葉の響きが、一瞬ぼくに小学校低学年時代の学校給食を思いださせてくれました。
 

 そのころは親も学校の先生も近所のおばさんもだれもかも、みんな口をそろえて、「ご飯はよくかんで食べなあかん。」「お百姓さんがいっしょうけんめい作った米や。」「満足に食べられなくて困っている人もぎょうさんおる。」「食べ残したら、大人になってその残った米さえ食べられずに苦しむことになる。」と呪文のようにくりかえして子どもに言い聞かせていました。

 


 そして掃除のホコリにまみれながら食べていました。ひどいときは掃除が終わって机とイスを元にもどすときになってもまだ食べているときもありました。
 
 それでかどうかは定かではないのだけれど、ぼくは給食を食べるのがクラスで一番遅かった。ぼくの小学校時代はお昼休みの給食が終わったころに、5年生と6年生が低学年の教室を掃除してくれることになっていたのですが、掃除の時間になってもぼくはいつもまだ食べ終わっていなかったんです。床をホウキで掃くために机とイスを一ヶ所に集めるときも、ぼくは食べながら自分の机をいっしょに運んでいました。
 


 ある日、学校から帰ると母が「何をくちゃくちゃかんでるねん?ガムか?」と言いました。「肉や。」
 
  給食の固いスジ肉を飲み込めずにずっとかんでいたんです。まるで笑い話です。その反動(?)で、3、4年生のころはクラスでもトップクラスの“早食い”になっていました。

 “よくかんで食べる”というのはとても理にかなっています。唾液を十分に出して消化を助ける、健康的な腹八分目で満腹になる、顎の発達や頭の刺激によい、などなど。
 
 それと“もったいない”の心。でも現代は、テレビなどで、店の商品の鮮度が落ちたり、売れ残ったらさっさと食品が捨てられるシーンを呪文のようにくりかえして見ているので、“もったいない”の心がうすらいでいます。
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