西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

第17回
環境のことを考える入口、ヨシ博物館
2001年11月29日 菱川貞義
 小中学校教育研究会近江八幡支部の環境部会では、まず、「ヨシと環境教育」について考える入口として、ヨシ博物館を見学することにしたそうです。
 
「環境のことを生活者の視点で訴えつづけたお父さんの歌日記の発見がきっかけ」
で西川さんがつくった、ヨシ博物館。

 思わず、「ヨシだから4月4日にオープンします。」と西川さんがメディアの取材時に宣言してしまい、不可能とも思える日程のなか、なんとかご自身で開館にこぎつけられたのは、“言った手前”もあったでしょうが、

「ヨシについてなるべく多くの方、特に小さい子どもたちに親しみをもってほしい。楽しんでもらうなかで環境のことも考えてもらえるようになっていければ。」
という西川さんの強い願いがあったからだと思います。


 オープン以来、西川さんの予想はうれしく裏切られ、連日「見学したい!」という方がたくさん来館されています。西川さんもスケジュールがずっと真っ黒な状況のなか、来館者の方を自ら案内しながら、分かりやすく、そしておもしろすぎる説明にみんな大満足。

 でも西川さんはずっと気がかりでなりません。
 
 博物館はオープンしたとはいえ、まだまだ未整理状態で、開館しながら整理していこうとの思惑が、忙しさのあまり果たされないままなのです。
「博物館をもっと整理したい。」
「説明プレートもちゃんとして展示物をもっと多くしたい。」

 びわこ市民研究所の「お知らせ&ご案内」コーナーで、ダメモトで西川さんのアシスタントを募集してましたら、
「アシスタントをしながらヨシのこと、環境のことを学びたい。」
という学生がすぐに現れました。できたてのサイトでもやってみるもんですね。
 
 この貴重(?)な学生は、滋賀県立大学環境科学部の尾崎正樹さんと宮角裕喜さんです。二人が燃えている環境活動については「市民研究室」コーナーで見ることができます。

 西川さんによると、二人はかなり優秀なようです。そして博物館もずいぶん整理されてきたようで、次に見学するのが楽しみです。これは、いずれ二人の奮闘記も見てみなくてはなりません。
 
「西川さん、ずいぶん整理できたようですね。」

「まだまだや。」
西川さんは博物館をもっともっと魅力的にするビジョンをもっておられます。
 
「バックグラウンドミュージックにヨシに関する音楽を流したり、ビデオもいっぱいあるから映像を流すコーナーをつくったり、ヨシキリや葉擦れの癒しの音を流したり、展示物に音声ガイドをつけたり......。」
 尾崎さん、宮角さん、よろしく?!

(次回につづく)






 

 「ヨシを環境教育に」と盛り上がってきている琵琶湖ですが、ヨシは昔、大きな経済的価値を有していました。そのひとつが“葭年貢”です。江戸時代や例えば琵琶湖では、織田信長が安土に築城したころ、葭年貢を納めさせたことが「沖ノ島文書」などに記載されています。
 
 葭年貢にまつわる話が、海音寺潮五郎(1975)の「武将列伝 五」(文春文庫)に収載されている小説「石田三成」の中でもうまく表現されています。
 
 秀吉が三成に五百石の録をあたえたところ、彼は、「宇治川と淀川の両岸に繁っている葭葦(よしあし)は、郷民共が勝手に刈りとってしまうが、これから運上をとる権利を拙者におあたえ下さい。お許したまわるなら五百石は返上いたしますばかりか、事ある時には一万石の軍役をつとめるでありましょう」と願った。秀吉がこれを許すと、三成は一町歩につきいくらと運上を定めて郷民共から徴収し、その後信長が丹波の波多野氏を征伐する時、秀吉も出陣したが、三成はちゃんと数百騎をひきいて従った。
 
 話としてはフィクションの可能性もありますが、ヨシが経済活動の中で大きな役割を果たしていたことがよく分かります。
(西川さんの論文「ヨシと人の暮らしとの係わり」からの情報)
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