西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

第18回
ヨシ博士の母校を訪ねて
2001年12月6日 菱川貞義

  ヨシ博物館には展示物のほかに、超膨大なデータが置いてあります。すごい量のフロッピーディスクです。
「ヨシに関して集めたり作ったりした情報はすべてここに収まっているんや。このデータの整理もしないといかん。」
 
 じゃ、それも尾崎さんたちに手伝ってもらって.....。
「ぼくはMacでつくってるんや。来てくれている学生はMacは分からんといってる。」

 

  にまぁ〜。
 いやあ、ぼくは西川さんのことを好きですが、“Mac使い”と聞いてますます親近感がわいてきました。こう言ってはなんですが、「Macを好きな人に悪い人はいない」と思っているくらいにぼくはMacが好きなのです。
 
 そしてフロッピーのデータをMacに取り込むお手伝いをしていたら、
「さっき見せたチラシの島小学校に行ってみよう。いま電話をしておいた。」
 
 西川さん、まだデータが途中ですけど....
 

 “善は急げ”とはこういうことなんですね。西川さんの車はぼくを乗せて、いや待ってください。赤瀬さんも乗せている!?
 
「島小学校は先生方もおもしろいし、環境に熱心なんや。赤瀬さんもついてきて損はない。」
「はい。」

 
 

 (これが近江八幡市立島小学校です)
「島小学校はぼくの母校なんや。戦争中疎開していた時代に数ヶ月間だけ在校していたんだ。」
 
 もうすぐ日が暮れる時間です。
 ほんとうに突然おじゃまします。
 校長の小島幹彦先生、


教頭の貴山明先生、
環境主任の植田一夫先生にお会いすることができました。
貴山さん
「広大なヨシ原に囲まれた近江八幡にいながら私たちはヨシをよく知らないんです。ヨシ笛を作るぐらいがやっとです。先生がヨシを知らないでは子どもにヨシや地域を指導できないです。」
「この度、チラシにあるように環境教育部会への指導助言をいただこうという内容は、ヨシとふれあう学習といいますか、ヨシとかかわって、子どもたちがどのような学習ができるのかをちゃんと見つめたい。島小学校は、まさにこういうヨシに囲まれた島にある学校、地域で、身近な環境から学習していくために、この地域の教材をいかに活かしていくか。」
 
「ご覧になったかと思うんですが、小学校の正門を入ったところに丸い小さい池がありますが、そこにヨシが植えられています。」

 
西川さん
「実はグラウンドのほうから裏口入学で来たものだから、見てないんです。」
 
 そういえば、かわらミュージアムのときも裏口からでしたね。
 
貴山さん

「教員ではなくて子どもが植えました。去年の6年生です。元々は使いようのない池やったんですが、子どもたちの案を生かして、池を仕切って土を入れて.....。」
「もう一方で、休耕田といいますか、田んぼがあるんですが、そこでビオトープをやっています。子どもの自主性を大切にしていますが、まだ、手をつけはじめた段階で、系統だったことはまだ何もやれていないんです。子どもの自主性を大事にしながら、ぜひとも、系統的にしていきたい。」


(学校の帰りに撮ったので、もう真っ暗でした)
 

 西川さん
「しかめっ面でやるより、わいわいがやがややるほうがいいんじゃないか。目的やらなんやら、あんまりシステム化するより。」

 貴山さん
「いろんなことはしているんです。例えば、子どもたちが“こういうクラブを作りたい”と自発的に作った、自然遊びクラブというものがここで立ち上がりましてね。子どもたちが主体的にやっていて。それで、“なかなかこの辺の地域の自然を分かってないやないか”ということで、この4月から、いろんなところへ遊びに出かけていったんです。船に乗ってヨシ原を散策したりして、だんだんと子どもたちの目が地域に向いてきているところなんです。」
「ヨシで何かできないかと子どもたちが言っておりまして。そういう目を大切にして、私たちがそれを整理していこうとしているんです。」
 

 地域のものは地域で育てなあかん。地域でやらないと育たない。
 
 最近ときどき耳にする言葉です。地域にとって大切なものは地域で守っていくのが一番いい。また、地域の環境を地域で考えていくことをしっかりやることが、地球の環境を考えることにつながっていくんですね。
 
 “教える”という作業は同時に何かを“学ぶ”作業でもあります。先生方は子どもたちを見守りながら、子どもたちといっしょにヨシから何かを学ぼうとしているようです。
 その姿勢は「子どもの主体性を大事にする」ことに表れています。まず子どもが自分で考えること、自分の考えを大切にすること。それが自尊心を育み、まわりのものへの気持ちも変わっていくのだと思います。

(次回につづく)


 ヨシ生産者の仕事はどんなものなんだろう?どうやら、やっていることは今も昔もあまり変わってないらしい。
 
 ヨシ刈初(かりぞめ)は、ヨシが枯れて葉を落とす時期である12月の初子(はつね)の日に行うのが古来のならわしで、初刈りしたヨシ3本を三脚状に立て(たぶん、昔、米の豊作を願い、ヨシを稲に見立てて神の依代としたことに関係)、神棚には、おう盛な繁殖力の象徴として、二股大根を供え、同時に家伝の“二股大根と鼠”の木彫りを飾り、ヨシのいやます増殖を祈念する。
 
 葭刈りは、3月下旬頃まで、“刈り子さん”による手鎌で行われる(機械化も一部導入されているが、重機がヨシの根茎を傷めるなどの理由から一般的ではない)。刈り取りが終わると、“ヨシ地焼き”が実施されるが、これには、ヨシを休眠から、覚醒させ、ヨシの害虫を防除し、できた灰が肥料となる、などの効果がある(ヨシの育成には、化学肥料、防虫剤、除草剤の類は、昔からまったく使用されていない)。この“ヨシ地焼き風景”は、早春の水郷の風物詩でもあり、近年、近江八幡市は“ヨシ地焼き祭り”というイベントを催し、観光客の誘致ならびにヨシの重要性のアピールに努めている。
 
 あと、収束、段抜き、選別、葭仕舞(よしじまい)と続きますが、それは次週のお楽しみに。
(西川さんの論文「ヨシと人の暮らしとの係わり」からの情報)
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