西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

第26回
生活の中で“環境にヨシ”を考える
2002年2月7日 菱川貞義

 モノの流通のことを考えるのは“環境”にとっても“くらし”にとってもすごく重要な意味をもっていますね。
 
額田さん
「嘉田由紀子さんも言っておられましたが、環境も人間と切り離して守るのではなく、生活の中で接点を持ちながら考えないといけないという視点は、大事だと思いますね。」

 
 くらしとの関係が実感できない自然はどう大切で、どう大変なことになっていて、どう守ったらいいか分かりにくい。
 
 
「私どもは会社で永源寺のほうに農園を持ちまして、3年前にヨモギの栽培をはじめまして、それをお菓子に使っているんですけど、農家の仲岸さんも3年前ぐらいに不耕起栽培をされたんです。その時に話を聞きに行きまして、8月頃だったか。それで去年(2000年)から不耕起をはじめたんです。そして仲岸さんらといっしょに『びわこふるさとオーナー会』をやらさせてもらってます。」
 

西川さん
「不耕起はすごい農法だが、最初は不耕起なんて、どういう字を書くのかも全然知らんかった。」
 
 
額田さん
「滋賀県はグリーン購入発祥の地といいますか、よそに比べて早かったんですが、地域ネットワークとしては2年目になる滋賀グリーンネットワークがありまして、その中で研究会が4つできているんです。その中のひとつ「食のグリーン購入」に私が参加しています。それを滋賀県ではじめられたらおもしろいんじゃないかと思うんです。」
 
「いままでは事務用品とか事業所中心のものが多くて、一般の生活者が一番購入機会が多い“食”は生活とも密着してるし、身体に入ってしまう。それに必要じゃなかったら買わなくてもいいというわけにいかない。滋賀県は“水”ということで水田とか食生活の後の生活排水とかあるので、食べ物を通じてのグリーン購入はひじょうに意味がある。ぜひ、意識してやっていく必要がある。」
 
「食べ物について消費者運動でも通常言われるのは、安心、安全。あとは健康。中国から安い野菜とかが大量に輸入されている問題を見ても、安心、安全、健康でいくとやっぱり、あとは安いほうをみんな買いますよね。で、疑問に感じるんです。何か抜けている気がするんです。」

 
「それが環境なんです。」
 
「“環境のことを考えた購入”を展開できたらと思うんです。いま日本では農業、林業といった第1次産業の人がどんどん減っているでしょ。これは、ただ“人件費が高い”というだけで無くなっているんです。それで山は手を入れない、農地は減反する。漁業も遠洋で大量にとってきて、近海の漁は限られてくる。」
 
 そんな山や農地は生活者から価値が認められなくなり、ほかの使い道にまわされていく。一度ほかの使い道にまわされたら、もう元へは帰らない。日本の里山がなぜ生活者にとって豊かなのか…。

 
 
西川さん
「日本は、人間が手を入れながら自然と折り合いをつけて暮らしてきた。里山もヨシ原も。」
 
 人間生活も折り込んだなかで環境や循環型を考えないといけないんですね。農業や漁業が日本の風景からなくなると環境はどうなるんでしょうか。

 
額田さん
「環境のことを考えるとそういうところに人とお金をつぎ込むべきなんです。」
 
 
 地域での循環が急速に失われている原因は複雑な要素がからみあっているようですね。
 
 額田さん
「ひとつの問題は輸送コストが安いこと。石油が安い。トラックのアイドリングストップだろうが、なかなか実行できないのは石油が安いからなんです。」
 
 会社も本人も痛まないんですから、必要ない。自家用車も購入価格は高いわりにガソリンがすごく安いので、せっかく車買ったら、なるべく乗るようになってしまう。

 
 
額田さん
「古い話ですが、私たちがパチンコに通っていた頃は、パチンコ屋といったら必ず駅前にあって、前に自転車をずらーっと並べて停めてました。労働者階級といいますか、その人らのレジャーでした。ところがいまはでっかい駐車場があって、車で来てる。ベンツとかもいっぱい。昔はそんなパチンコ屋は想像もつかんかったです。」
 
 歩いたり、自転車で移動することがどんどん不便になって、郊外型の大型店がどんどんもうかるようになってるんですね。石油は安いし。こういうお店も石油が高くなると困るんでしょうね。
 
額田さん
「もっと高齢化社会になっていくと、ますますこういう歪みがでてくるんでしょうね。車に乗れないと買い物ができなくなるとか。地域の生活に歪みがでるという点は、原発が最たるもんでしょうね。」
 

 原発はあきれるほど都合よく解釈されている経済だと思います。
 
 
額田さん
「農業もよく注意しないとまちがってしまう。本来農業にいちいち有機農法とか名前をつけなくても広い意味で昔はそういう農法だったんですが、気をつけなきゃならんのが、いまは家畜の糞尿を使うと“有機農法”だとする傾向があること。食品リサイクル法でも推奨されていますが。でも、その肥料は圧倒的に海外から来ているという問題がある。その家畜には、例えば病気を防ぐためにホルモン剤とかがいっぱい投与されているんです。」
 
 
西川さん
「魚だって抗生物質を使っている。」
 
額田さん
「自分の目で直接確認できないような、海外の糞尿を使って“有機農法”だというのはひじょうに問題があります。不耕起農法はその田んぼから産出されるものを基本の肥料にして、足りなければ近くの山でとれるものとかをできるだけ使っていくようにしている。仮に家畜の糞尿を使う場合でも、目に見える範囲内のところから手に入れる。」
 

 農薬も田んぼを見ないでマニュアル通りに大量に使っていると、無駄にやりすぎてしまっていると聞きました。「農薬は全部なくせ」じゃなくても、何割か減らすだけでもずいぶんちがうんでしょ。
 
額田さん
「そうです。問題は方向性なんです。いまは“農薬を減らす”という方向性で動くというのが大事なんです。いっきょに農薬をなくせと言ったら、ものすごく負担が大きいんですよ。農薬ももっと考えて使う。例えば一斉防除というのがひどい例で、上が決めて、何の判断もさせないでやるというのがそもそもおかしいですね。“便利”、“快適”だけでいったら、そら何でもあったほうがいいに決まってます。そこに環境という尺度が入るとちがうことになる。」

 
西川さん
「話を聞いていると、農業の研究もこれから発展するんじゃないかな。額田さんといっしょに不耕起に取り組んでいる岡田さんもおられたらもっとよかったが…。お、電話だ。」
 
「いやあ、ちょうどよかった。いま電話があって、大林さんがこっちに来るって。こらまた、いまの会話にぴったりの方、農薬のプロなんや。もうまもなくこっちに着くって。ぼく大林さんには、今日こんな話をするって言ってなかったんやけど、何しに来られるのかな。偶然だけどぴったりの方が来られる。額田さんもだけど、いろんなおもしろいことをやってる人なんや。」
 
 もしかしてこの部屋の出来事がインターネットで生中継されているみたい。それとも何者かに仕組まれた罠なのか?
 
 
 
 
 (次回につづく)

 
西の湖宝探し
主催:東近江環境保全ネットワーク、東近江水環境自治協議会
協賛:淡海環境保全財団、後援:東近江地域振興局
2002年2月11日(月・祝)10:00〜16:00
<続報>
ヨシ刈り(午前):安土町大中堤防下のヨシ地
10:00〜12:00
ヨシは刈ることによって元気になります。そして、西の湖をきれいにしてくれます。
 
注意
防寒具、長靴(湿ったヨシ地に入ります)、手袋など作業のできる服装で来てください。雨天の場合、ヨシ刈りは中止します。オープニングイベントの会場を「やすらぎホール」に変え、10時より実施します。
 
お昼には、おにぎり、みそ汁などを準備します。
西の湖美術館づくり・ヨシ舟づくりのキックオフ宣言
ヨシ笛演奏会(第1部)=瓦ミュージアム館長 菊井さん
 
イベント(午後):安土町江ノ島B&G敷地内「西の湖ふれあいハウス」とその周辺
 
お昼からは、4つのグループに分かれて西の湖の「宝探し」を行います。
ヨシペンづくりとヨシペンでの写生
ヨシ笛演奏会と音楽談義
ヨシ砦の築城
和船で西の湖観察

 
 
 参加料は無料です。楽しいヨシ刈りボランティアをしてくれた方には昼食も用意されています。この機会にぜひヨシ原の自然とふれあってみましょう。いろいろ発見がありますよ。事前の申し込みも特に必要はないとのことです。午前10時に安土町大中堤防下のヨシ地や安土町下豊浦巴のヨシ地に来てください。雨の場合はやすらぎホールでイベントがはじまります。
 
 ぼくもヨシ刈りは初めてなのでいまからワクワクしています。でも雨になってもお楽しみがまっています。ヨシ刈りが中止になると、その代わりに西川さんの楽しいお話があるからです。
 
 
よしよしヨシ刈ボランティア
今年で11年目を迎えます。ぜひ参加してください。
2002年2月16日(土)・17日(日)・23日(土)・24日(日)の4日間
10:00〜15:30
安土町下豊浦巴のヨシ地(西の湖のヨシ地に面した干拓地の堤防下、集合場所)
4日間ともヨシ刈を中心としたイベントです。昼食時にヨシと環境、西の湖の景観、水鳥のことなど様々なことについて語り合いましょう。(昼食は準備します。)
 
<問い合わせ先>
東近江水環境自治協議会 丹波 Tel.0748-46-2006、竹田 Tel.0748-46-2166

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