西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

第40回

高くていいものが安くてヨシ

2002年5月16日 菱川貞義
 100年もつ家もそうですが、スダレでも、安いスダレを買ってはすぐにこわれたりして、しょうがないといって捨てて、次の新しいのを買って、そうして愛着のわかない商品を買い続けるのと、高価な琵琶湖のヨシのスダレを思いきって買って、大事に使えて、長持ちして、もっていてうれしくなるのと、どっちがいいのか?
 
 
 しかもいい商品が10倍も長持ちすれば10倍高くても負担するコストは同じだし、買っては捨てることのみじめなくり返しを考えたら、一見、高価に見えるほうが安くつく感じがします。
 
 
西川さん
「そこに野ざらしになっているスダレも100年ぐらいは経っているが、まったく虫がつかない。きれい。だからこんな家に住んでいる娘は代々、虫がつかなくて困っている。」
 
丹波さん
「わたしは世界水フォーラムのメッセンジャーとして、すでに何回もメッセージを送っているんですけれど、『生物の共生、それによって水をきれいにしていく』『水は生物それぞれのいのちが育てているんだ』という観点に立ってやってほしいとお願いしています。基本的には自然の回復を地球規模でやる。これを世界水フォーラムの大きな柱にしてくださいと。それとせっかく世界水フォーラムをやるのに、大津かどこかのホテルに閉じこもってやってたんじゃ、どこでやっても同じですから。だから現場へ来てくださいとお願いしてます。」
 
「山をきれいにしようと思ったら、いったん人間が手を入れた山は、整備し続けないとひどいことになるわけです。手をつけなくなったとたん、無残な姿になったり、開発されてしまったり。」

 
 
「山の人が山で食べていけるように。ひじょうにむずかしいことかも分からないけど。若い子は、いまじゃ山のことなんか振り向きもしないんです。ここの山がいいといって来てくれる人がいるんですが芸術家が多いんです。芸術家でなくても自然を楽しみたい人、自然に手を加えないで楽しみたい人が集まる場所をつくりたい。」
 
「川では不耕起や有機で生活ができるような農業ができないか。湖では有機で牛とか食べ物の循環ができないか。そうしたキャンペーンや勉強をしていくための組織として、東近江環境市民会議というものを立ち上げたい。なんとか、いまのところは曲がりなりにも順調に進んでいます。」

 
 
 うわさにたがわず、すごく精力的に動いておられますね。
 
西川さん
「それと4月になると、いよいよ東近江のアジトができる。仮住まいの丹波邸から出て、豪華なオフィスを持つようになる。」
 
丹波さん
「豪華???」
 
 
 (次回につづく)

 
 西の湖はほんとうにステキな風景がいっぱいあります。「西の湖美術館づくり」に直接参加できない人たちも、丹波さんたちを心で応援してほしいと思います。西の湖を見たことのない人にはむずかしいことかもしれませんが、このコーナーでも、もっと西の湖やヨシ原を伝えていきたいと思います。
 
「西の湖美術館づくり」
に向けた丹波さんたちのメッセージから、西の湖の、お金に換えられない価値を感じてください。
 
 
 私たちの会、「東近江水環境自治協議会」は近江八幡市と安土町の有志によって立ち上がった会です。会設立の原点が長命寺湾から西の湖にかけての内水域の景観の美化と水質の浄化でしたから、原点の活動をどのようにすすめるか絶えず気にかかっていました。
 
 いろんな活動をしていくなかで、多くの人達が西の湖の自然の豊かさと美しさに様々な思いをもつておられる。そしてもっと美しい水に、もっと豊かな生物の住む場所に、もっと美しい風景にしたい。もっと多くの人にこの場所にきてほしい。という思いが盛り上がりつつあるのを感じます。

 
 
 そのようなときにこの美しい場所を守るため“西の湖美術館”という言葉がでてきました。また安全に一周出来る道をつくろうと“西の湖回廊計画”という言葉もでてきました。
 
 しかし、思いがあっても、具体的な計画も、お金もあるわけでない。ではどのようにしてこれらの思いを実現すればよいのでしょうか。
 
 
 そこで、ともかく現場を見よう。そして清掃整備の活動を始めよう。多様な能力の持ち主に参加して頂いて、休憩などのときに出る議論の中から美術館づくりのアイデアをあつめ、行政や企業の人達の参加を得て共にそれを計画に移し、実現に持ち込もう。
 
 そして範囲を西の湖から、北の庄沢、八幡堀経て長命寺湾に。また円山から長命寺川を経て長命寺湾にひろげて“長命寺湾・西の湖グランドワ−ク”を目指そうと思っているのです。
 
 江戸時代の先祖は地道な活動と試行錯誤から得られた知恵でブルやコンクリがなくても「安全でいのち豊かな里山」をつくってきたではありませんか。住民と企業と行政が知恵を出し合えば「平成の里山や里湖(うみ)」がつくれるはずです。
 
 お金がない、成長がないと右往左往したり、悲観するのはやめましょう、われわれの心の奥底にしまいこまれてしまっている近江商人の心と百姓の腕を取り戻し、自然との共生のなかで人間らしい暮らしが出来る環境をつくりなをそうではありませんか。
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