西川嘉廣さん
西川嘉右衛門商店会長

第48回

ヨシのままに教育するのはむずかしい?

2002年7月11日 菱川貞義
村井さん
「壁新聞も完成品だけじゃなく、つくっていく過程がいいんです。『ここちがうやんけ』『ここどうしたらええの』とか葛藤もするし、『はよ書かんか』『間にあわへんやんけ』とか、そういうのがあって、はじめて子どもたちが力をつけていくんだと思います。そっぽ向いてた子もだんだん見ようとしてくる。」
 
 なんか、数人がワイワイやっている過程を見ると、ちょっと「おもしろそうだな」と思うんでしょうね。最初見ているだけの生徒が自発的にかかわろうとしていくときの、心のなかの変化みたいなものは大事だし、びわこ市民研究所のなかでもそんなプロセスが見られたらと思います。
 
「そうです。そんなふうにヨシでもやろうと。だけど、ヨシとかかわっていこうとすると、時期的なものが問題になってくるんです。」
 
西川さん
「カリキュラムですか。」
 
村井さん
「そうです。ヨシ刈りは1月、2月なのですが、学習はそこからスタートできない。4月からの1年間のカリキュラムをこれから考えるんですが、日程とかどう進んでいくのかまだ分からない状態です。いろんなことを検討していますが、定期的な活動になったり、とん挫してしまうことも。」
 
 そういうプロセスを大事にしたいんです。できたらその辺の経過を子どもたち自身の手で研究室をもってもらって、発表してくれてもいいと思ってるんですけど。
 
「それは子どもたちも喜ぶんじゃないでしょうかね。」
 
 
西川さん
「いま、この学校ではパソコンはどれくらいあるんですか?」
 
村井さん
「一人1台はあります。学年で見ると。」
 
 
西川さん
「3年になると高校受験ということで、環境学習をすすめるのはむずかしくなるんですか?」
 
村井さん
「そうですね。ただ、総合学習というか、体験学習が授業として、週2時間組み込まれてますから、その時間はきちんとできると思います。」
 
西川さん
「総合学習の時間をとっても、受験ということがかなりストレスとして影響しないですか?」
 
 
村井さん
「当然すると思います。総合学習もまず興味をもてるかどうかが大事です。いま話し合っているのは、子どもたちの興味がボランティアにあったら、ヨシもボランティア体験のひとつとして組み入れようかと思っているんです。大きなボランティアという取り組みの中でヨシ刈り体験とか老人介護とか。子どももグループ分けして、テーマもいくつかの中から選考できたほうが子どもにとってもいいかなと思う。」
 
 
西川さん
「子どもの興味はみんな同じというわけじゃないですからね。」
 
 ヨシ博士はいつも、ふとした言葉のなかに“子どもの教育の本来のあり方”について注意深くあるように助言を与えてくれています。子どもにとってほんとうにヨシといえる教育を見つめようと。
 
 (次回につづく)

 世界湖沼会議が滋賀で開催された2001年、毎日新聞滋賀版に連載された記事が「新びわこ宣言(サンライズ出版)」として1冊の本になりました。さまざまな形で琵琶湖の環境保全に取り組んでいる人物44人を取材したものということで、もちろん、そのなかにヨシ博士もちゃんと入っていました。その記事の一部を紹介します。
 
 
美しい湖畔の原風景、
ヨシ原保全を訴える

 しかし、深く知るほど、取り巻く環境の厳しさが分かってきた。かつては屋根やすだれなどの材料に重宝されたが、安い輸入物に押され、めっきり需要は減った。往年は町内の八十軒ほとんどがヨシ卸業に携わっていたが、今では数軒を残すだけ。若手の後継者もない。エコロジー商品のヨシ紙も、普通紙の数十倍の製造コストがかかる。イベントのヨシたいまつ用などにも卸しているが、「商売としては先細る一方」と嘆く。
 開発でヨシ原も消えていく。1953年に琵琶湖畔に260ヘクタールあったというが、半減し今は130ヘクタールほど。1992年から10年計画で30ヘクタールの植栽を目指した県の事業もまだ10ヘクタールほどで、目標達成は不可能になった。
Copyright (C)2001 Biwako Shimin Kenkyusho all rights reserved