岡田守弘さん
岡田麻株式会社・代表取締役

第5回

環境をめぐるさまざまな活動

 
2002年6月20日 坂本 隆司
 岡田さんにはじめてお会いしたのは、この夏に近江八幡で行われるイベントの準備会合でのことでした。年齢も職業も違う仲間と楽しそうにイベントの計画を立てる岡田さんの笑顔が印象的でした。
 本業の麻織物業のかたわら、貴重なプライベートの時間を使って、さまざまな活動にエネルギーを注ぎ込むのは、はたから見る以上に大変なことだと思います。そんな活動もいい仲間に恵まれて、エネルギー源にもなっているようです。
 岡田さん― いろんな活動に関わっていますが、刺激を受け勉強にもなり楽しいですね。はじめは、麻のことを調べていくうちに、麻が環境にとって役立つ植物だということが判り、自然に興味が環境全体に拡がってきたんです。

 この『おもしろエコ人』に登場願うきっかけとなったのも菱川貞義暫定編集長が訪ねた西川嘉廣さんから紹介でしたね。『びわこ市民研究所』に登場しているほかの人ともお知り合いのようです。そんな幅広い活動が見込まれてか、現在では、地域の環境保全活動や、行政が行う環境保全会議の委員なども務めているそうです。環境に関わっているいくつもの団体に自然に付き合いが広がってきたと聞きました。
麻の繊維を持つ岡田さん

 岡田さん― 平成10年の3月に地域の環境活動を考える『淡海地球村』を立ち上げました。その時に役所に協力を依頼して、生涯学習という勉強の面から協力して頂いたんですが、最初は「環境問題? 公害のことですか」と言われました。環境問題への意識が高まりだしたのはつい最近のことだと思います。他に、現在では県のほうとも協力していろんな活動をしていまして、環境総合計画というのが5年前に作られたんですけれどもそれを見直す時期に来ているんです。今度は平成15年度から施行される総合計画の基本方針づくりが進められていて、その委員をやっています。そこで強く言っているのは、人のための計画でないといかんと、あまり水の検査ばっかりするなと(笑い)。もっと地域のコミュニティーみたいなものを大切にする活動を基本計画の中に入れていただく方が早く環境が改善するじゃないかなと言っています。それと、役所の仕組みの上で、環境には土木事務所とか水道課、水利課とかが関係してきますが、すべての課をうまく統制するようなシステムが必要だと提案しているところです。
 他には、東近江で環境保全ネットワークという活動をしています。これは以前に環境自治推進委員ということで平成10年度からやってまして、その時に、行政と市民とそして企業の3者で地域の環境をよくするための環境ボランティアグループのネットワークを作ってほしいと提案させていただいた。その翌年度に予算をとっていただいて、環境保全ネットワークというのができたんです。あと、能登川町で環境アドバイザーというのもさせてもらっています。
苧麻(ちょま)の芯材
 最近では行政も環境活動に熱心なところが増えてきました。特に滋賀県は日本最大の湖・琵琶湖を抱える県として、行政も市民の方も環境保護に熱心だという印象があります。

 岡田さん― 5年ほど前には、まだ環境と経済は相反するものという意識がありましたよね。環境活動と経済活動というのは違うものだというギャップがありました。私自身も一生懸命環境活動をしていても家に帰れば環境を悪くする生活道具がある。その点に疑問を感じていました。ところがここ1、2年の間に徐々に仕事と環境といっしょに考えていこうという動きがありますね。今後環境活動もそれぞれの暮らしや仕事の中での環境をどうとらえるかということを目的にやってきたいと思います。『びわこ市民研究所』も地球環境と大きく広げるのではなく身近なところからやっておられるのがいいですね。たぶん10年後には環境という言葉がなくなると思います。もっと自然にあたりまえの言葉になると思います。

 生活の中に溶け込んだ環境活動ですね。エコ商品だから高くてもしょうがない、デザインもガマンしようでは社会に広く受け入れてもらえないですね。エコ商品ということではなく、ごく自然に受け入れられる商品でないと通用しなくなってきました。作る側も買う側もその辺の意識も変わってきたように思います。

 岡田さん― 生活の知恵というのはスパンの長いもんだと思います。日本が経済発展をしてきて、その間に農薬や化学物質なんかも新しく生まれ、今では生産禁止になったものも多い。連綿と続いているのは知恵なんです。あと10年〜20年したら変わっていくことも多いでしょう。環境の問題もまだまだ、ひとつの意見にしかすぎないです。いくら良い意見を持っていても大きな世論にまで広がるところまでは行ってません。それをいかに広げていくか、インターネットもあるでしょうし、いろんなイベントあるでしょう。いかに議論を高めて広げていくかが一番大きなテーマだと思います。
(つづく)

 『麻』ひとくちメモ
 蚊帳 その(1)
 岡田さんとの話の中でこんな話題が出ました。― 「雷がなったら蚊帳の中に入れということを言いますが、蚊帳に使われている麻には、雷から発生する電磁波を吸収する働きがあるといいます。蚊帳はいつから織られたのか分からないですが、あれは生活の知恵ですね」

 蚊帳は、今では一般の家庭ではほとんど使われなくなりました。せいぜい乳幼児のいる家庭で母衣蚊帳が使われる程度です。昭和40年代から急速に減少していったといわれます。
 蚊帳が使われなくなった背景には、下水道の完備、網戸や殺虫剤の改良、普及が影響しているようです。また生活環境の変化と開発で蚊の発生自体が減っていることもあるようです。
 しかし、蚊帳、特に麻で作られた蚊帳には数々の利点があったのです。

(つづく)
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