チェア工場を見学させてもらう。その中に粉体塗装をしている所があった。ここは環境に配慮した工程になっている。塗装後に付着しなかった粉を回収する装置が特別に設けられているのだ。
粉体塗装というのは、塗料を溶剤でとかして塗るのでなく粉状のものを吸着させ加熱して付ける。これだと有機溶剤を空気中に飛ばさないから、そちらでも環境に良い。ただ、一般的にはそのためではなく耐久性の必用な厚塗りのために粉体塗装が使われる。この工場でも目的によって溶剤を使った吹き付けも併用されている。粉体塗装のくっつかなかった塗料粉は集めてもう一度使う。設備費はかかるが長い目で見てその方が良いという判断だろう。
他に、他社でもあることだが、従業員による改善運動を盛んに行っているという。掲げられた標語に『上手に困って楽しく改善』とあった。それを『ちえくり改善』と呼んでいるのだそうだ。「ちえくり」の「くり」は「からくり」の事であるらしい。「知恵を出し合い、新たな動力を使わずに、楽に仕事ができる」改善のこと。これでムリムダムラをなくす。それが「効率を良くすると環境にも良い」の実践になるのである。
簡単なものでは、部品を置いておく棚を傾斜させ、部品が順に手前へすべり出してくるようにする。これで作業効率を上げるといったことだ。
あるいは、出来た品物を傷つけないための工夫。ベルトコンベアを流れてくる部品がラインの終点で溜まると部品同士が衝突して傷不良が発生していた。手作りのストッパー(エネルギーゼロ)を取り付けることで部品が間隔をあけて停止するようにした例があるという。これによって生産ロス低減による省資源がはかれる。
「節約といっても電灯を絞って工場が暗〜くなって、では、皆の気持ちも暗くなるばっかりで効率もあがりませんワ。失敗品が出たらそれは環境に負担をかけてしまうわけですからね」
さらに、コージェネレーションシステムでの自家発電を行ったり、使用水量を減らす様々な工夫もおこなっている。また、滋賀県からの要請もあって、敷地には積極的に植樹を行い、周辺の排水路清掃を社員がするなどの活動を長年行っている。
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