溶融スラグというのが解かりづらいので、ここであらためて徳田さんに説明してもらう。
「ゴミも下水汚泥も通常は焼却処理されます。汚泥も乾かして焼きます。すると灰になる。焼却灰は従来なら埋め立てなどしていたわけです。ところが、灰になるよりもっと高温で溶かすと、ここにあるような粒状になるのです。それが溶融スラグです」
つまりゴミを高温でドロドロに溶かしたもの。それの冷えたものということだ。スラグは日本語では「かす」というような意味である。サンプル瓶の中に黒い粒が入っていた。スラグの粒の大きさや色は条件によって少しずつ違うらしい。
これを材料にして、透水性・保水性のある多孔質のセラミックブロックに作り上げるのが東レの技術なのである。
現在のトレスルー標準品には、京都市下水道局の鳥羽処理場で作られた溶融スラグを使用している。これは溶融スラグの「結晶化」を行ったものだ。ゴミ焼却場の中でも、これができる焼却プラントは現在のところ余り多く存在していないのだという。
溶融炉で溶かしたものはガラス質で、それを使い、トレスルーを製造することも可能なのだが、さらに結晶化炉に通すと結晶化スラグになる。結晶化したもののほうが質が良く、有害物質が酸などによって溶出する可能性が減少する。
京都市下水道局はこの溶融結晶化スラグを「みやこ石」(漢字で「京石」と書く)という名前までつけて広報している。「ここで出来たものはもう廃棄物ではありませんよ。これは利用価値のある商品なので、有料で買っていただきます」というのである。そのパンフレットを見せてもらった。
東レ(株)以外のタイル、アスファルト、コンクリート製品の材料としても使われていることが紹介されている。
それにしても僕は、京都市下水道局が「みやこ石」というスラグの立派なパンフレットまでつくってPRしていることに感心したのだった。
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