2002年7月25日 百木一朗
KNIのトレジャーハンティング 第3回  

テーブルにジャンク品を置いて、解体できるようにした。

 
嬉々として解体する若者
 
リユース品の販売コーナー

 同社としては物販を行うのは始めてであったし、前例のない企画だったので、お客さんが来てくれるか不安であった。しかし、ふたを開けてみると開店早々たくさんのパソコンファンがつめかけて大人気だったということだ。

 リーダーの山本貴康さんがふり返って語る。「はじめは店舗というより学祭の模擬店のノリでしたね。これは金魚すくいに似ているでしょう。自分でやってもらい、とったら持って帰れるので。ただ、うちのは解体するだけで何も持ち帰らなかったら無料なんですが…」

「品物を並べていると開店時刻前から人だかりができて、驚きました。こんな事もありました。あるマニアの男の子が分解しつつ僕に解説してくれるんですよ、この部品は珍しいとか、このサウンドカードは買えば2000円くらいもするんだとか、そして解体した一台の部品合計が9500円の値打ちになり、とっても得だ、と言うんです」

 そしてわかったことは、安く部品を手に入れられることが良いだけでなく、古いパソコンを解体する行為そのものが彼らには喜びである、ということだ。見たことのない機種のカバーをはずして観察し、中身を確かめつつ解体する。

  このトレジャーハンティング(略してトレハン)事業に加わった社員の森澤匠一さん(26)も相当なパソコン好きの一人だ。森澤さんによると、パソコンの完成品を買うのでなく、部品を買い揃えて組み立てる趣味は、マニア層だけでなくパソコン好きの多くの人たちが楽しんでいる、ということだ。そこでは新品の部品だけでなく、以前使っていた機種から部品をはずしてきて使うということもそう珍しいことではないらしい。

 もともとリサイクル事業を行ってきた同社にすれば、解体は人を雇って行わなければならない仕事だ。そのために企業から処分費用をもらうので、引き取ったパソコンを売ってお金にする必用はなく、今まで販売の発想はなかった。

 トレハンの様子を見ていると、人件費をかけて普段やっていることを、お客さんが無料で喜んでやっている。それが驚きだったという。そして彼らは持って帰った部品を使ってパソコンを作る。「ものづくり」になるわけである。

(つづく)
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