2002年9月19日 百木一朗
ダイハツの排ガス浄化触媒 第2回  
丹さん
 

 

 同社材料技術部の丹係長らが取り組んだのは、小型で今までより性能の良い触媒をつくることだった。
 ダイハツが主に作っている軽自動車は、外形が小さいから機械のスペースも狭くなる。必要なエンジンや車輪などを収めると一杯で触媒を入れるすき間がほとんどないというのだ。

 普通乗用車など大きめの車では従来から二個、三個の触媒を使って浄化性能を達成したものがある。エンジンルームのほか床下などに空間があるからそれができる。しかし軽自動車は空間がなくてできない。また、一つで済ませられるなら済ませたほうが安上がりだ。ただしそれを実現するのが難しいのである。

 軽自動車はどうしても機械として低く見られる傾向があるのだが、技術的にこのように普通車では要求されないような難しい問題解決をなしとげて、むしろ大きな車より技術的に高度なところがたくさんあるのだ。
 TOPAZ触媒は、楕円柱の外形をしているが、一般的には正円の円柱形触媒が多い。これも空いているスペースに詰め込むため、楕円の切り口になったものらしい。

 この一個の触媒をどこに設置するかを検討した結果、丹さんらはエンジンのすぐ近くにすることを決めた。スペースが限られているのは事実だが、エンジン直下に触媒をおくのは他にも理由がある。触媒はそれが温まっていないと(300〜400度以上)充分な性能を発揮することができない。エンジンは非常に熱くなるからその近くに設置しているほうが温かくなって有利なのだ。

 丹さん「有利なのはいいんですけれども、問題も出てくるんです。エンジンの熱に触媒がいつもさらされ続けることになるので、熱の影響で触媒としての浄化性能が落ちます。そこで何とか耐久性をもたせるということをしなければなりませんでした」

 丹さんの専門はセラミックス材料である。金属か樹脂のようにも見えるが、どちらでもない、それ以上に優れたところももっている材料だ。
 入社して、エンジン部品のピストンなどを作るためのセラミックス材料の開発部門で働いていたが、その後、丹さんは触媒グループに移った。この触媒はセラミックス材料研究の成果が発揮されたものだ。

(つづく)
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