2002年9月26日 百木一朗
ダイハツの排ガス浄化触媒 第3回  

セラミックス材のサンプル

 

従来の触媒(左)と今回の触媒(右)
大きさが違うだけでなく、マス目の密度が違う

 
TOPAZ触媒をつけた製品の例(MAX)

 自動車会社ならセラミックスの材料などはセラミックスのメーカーが開発した性能の良い材料を採用して使うことが多いと思うのだが、そのようなものがなかったため、ここでは丹さんたちが独自でダイハツオリジナルのセラミックス材料を作りだしたのである。

 触媒の効果を得るにはロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)といった貴金属が重要な役割を果たし、セラミックスがサポート材になる。

 この触媒は目標の性能を得るため主に三つの課題を克服した。
 まず「低温活性」。エンジンを始動して、まだエンジンが温まっていないときに有害ガスが多く出るので、出来るだけ低温の段階でも触媒がきくようにしたい。これには、触媒成分である貴金属の特性を活かして、パラジウムを下層に、白金とロジウムを上層に配置させた二層コートにした。これにより、従来の触媒より100度低い温度での目標浄化率を達成した。

 次に「高温での耐久性」。これは前にも書いた通り、エンジン直下に触媒を置くため、年月を経るにつれて熱で触媒としての浄化性能が落ちてくる問題だ。1000度くらいの高温下では貴金属粒子がくっつきあって大きな粒子になり、触媒としての劣化が起こる。新しいセラミックサポート材を開発してそれが起こりにくくした。

 さらに「加速・減速時の追従性」。有害ガスの出かたを調べると、低温時のほか加速や減速をしたときに一瞬出る。それも積み重なると大きいので、出たときにすぐにとらえて浄化できるとよい。そこで「セリア」という セラミック材を原子レベルから研究して、千分の一秒オーダーで反応し、効果が出るようにした。

 丹さん「このセラミックスは酸素を貯める能力があるんです。排出ガスの中で酸素が不足しているときは酸素を吐き出し、逆に多いときは自ら酸素を取り込んで貯めておくことができます。それもすごく速く反応します。
 セラミックスっていうのはやきものの一種で、土みたいなものです。ただ、そんな性質をもたせることもできる土なんです」

 これにより加速・減速時の追従性も向上させることに成功した。

 「こう説明しても、触媒というのは動くわけでもなく、面白くないでしょう。エンジンとかでしたら動いて音が出て車を動かし凄いなぁといったところですが。でも触媒は縁の下の力持ちで役割をはたしている、そういうものなのです」

(つづく)
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