触媒は近づいて見ると、非常に細かいマス目で出来ている。表面積を大きくして通過するガスによく触れさせ、浄化しようというのだ。
過去のものは1インチ四方あたり600個のマス目でそれも細かかったのだが、今回はそれを900個にした。これもセラミックスの技術である。
細かくすると表面積が増えるが、目詰まりしやすくなる。するとエンジンの出力が落ちるので、これはさけなければならない。そのため、マス目の壁を非常に薄くして通路は確保し、性能を邪魔することなく目標を達成させた。
1インチ四方に900個といえばひとつは1ミリにもならない。そのひとつひとつに壁があり、触媒がコーティングしてあるという、われわれ一般人には想像しにくい小さな世界である。
ところで、丹さんは「これがうまく行ったのはわれわれ材料屋がエンジン開発担当者と一緒になって問題に取り組んだことが大きかったです」という。
エンジン制御の技術とピッタリ息があわないと目標達成はおぼつかなかったというのだ。
丹さんは自分のことを「材料屋」という。そして「エンジン屋さんと、ほとんど毎日顔をあわせて仕事をしてました。ときには大声をはりあげてケンカのようになったこともありましたが、お互い何とか解決の糸口をみつけようと協力しました」
自動車と環境の今後を考えると「材料屋」さんにも活躍してもらわないと、どうにもならないようだ。触媒以外でもリサイクル技術のほか、燃料電池などでも材料がどうも大事らしい。
丹さんは別に「主役」になりたいわけではないだろうが、これからは材料屋さんも、縁の下の力持ちだけでなく表舞台に出てきてもらうべきことが増えそうである。
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