木原さんは全国の木の産地を歩いて多くの知識と経験があるので、家を建てる人にお手伝いをしますというわけだ。工務店や設計者も紹介する。コーディネート料は取らない。「そのかわり、建てることになったら僕のところから材木を買ってね、と言います。僕は材木屋ですから」
今日も相談に来ている人がある。その方は、自宅マンションを改造している。普通のマンションだったのを木をふんだんに使ったものに変えている。いま工事していて、近所だから見学させてもらったらどうですか、というので、後で見せてもらえることになった。
ところで、無垢の木を使うと費用が高くつくのだろうか?
「それはある程度高いです。しかし住みたくなる家ができます。それから、輸入材が安くて国産材がべらぼうに高いとうことはない。僕らは国産材を勧めている。普通の人がちゃんと建てられる値段で出来ます」
木原さんは言う。「このごろの家というのは次のよう。全室クーラー、床暖房、浴室乾燥機があり、ジェットバスも付いています……住まいというより設備のかたまりみたいなもの。費用もそちらにかかっている」
そうではなく・・・
「家づくりの発想を変えてほしい」
もともとの住まいの原点に返ってもらいたい。
「きちっと、きれいな、心豊かになれるような家をまず作る。それが絶対に大事です。
クーラーは付いてまへんで。一年住んでみて暑かったら、クーラーを付ければよいじゃないか」それくらいに考えておけばよいという。
日本の昔からの家だと、そういうものだった。また、自然の知恵をうまく使っていた。ところが、戦後たくさんの家をつくる必要があった中で早く安くできる方法を追いすぎた。それに、木で作ったところが割れたとか、反ってすき間があるなどのクレームが来たので、対処した。
優秀な日本の技術者が、割れたりしない大量生産可能な建材を真剣に作り過ぎたのかもしれない。クレームは来なくなったが、住まい手のほうが「それって、ちょっと違うんじゃないか?」と思いはじめている。これが現在の状況だろう、という。
かといって、木童の木の方は自然の木だから割れてもよい、と居直っているわけではない。木原さんたちは協力工場と共に木の乾燥技術を研究しており、出来るだけ割れや反りの出ない材木を供給する体勢が既にできている。
「木は割れるかもしれませんよ、と話をしていますが、できれば割れてほしくないのは当然です」
ただ、自然素材とおおらかに付き合いましょうということだ。
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