まず缶の話である。
缶のフタは厚みがあり、缶全体の四分の一程度の重量を占めていた。そこで、缶フタの口径を小さくすることで軽量化しようということが考えられた。
写真の左が1975年頃の缶で「209缶」と呼ばれるもの。87年に「206缶」に切り替え。 他社はこのサイズで今も使っているのを、キリンは94年にさらに口径を小さくした「204缶」にした。結果「209缶」と比べて約26%の軽量化ができた。
円筒の胴体のところは円いから薄くても強度がもつ。胴体の厚さは0.1ミリくらいだそうだ。極限に思えるが、胴体も以前より少しずつ軽くすることに成功している。缶の上と下は平らに近いからやや厚くしないと強度がもたない。だからフタは厚みがあったのだが、胴体の上のところを絞って、口径を小さくしたというわけだ。
缶を開発したのは缶メーカーだが、それだけでは軽量の缶ビールは実現しなかったという。ビール会社がその口径の狭くなった缶にビールをうまく詰める機械を工夫しなければならなかったからだ。
缶を詰めるところを見学すると、まだビールの入っていない缶が一列になってどんどん機械に入っていく。大きな円を描いて動きながら充填する。1分間に2000個だから1秒に何十個か、という機械のため、見えないくらい早いのだが、ビールが注ぎ込まれるとフタをかぶせ、周囲をグリグリッと封をするのだという。
保坂さんの説明。「ところが、口径が小さい缶になると、ビールを注ぐノズルの口径も小さくなりますので、そのままだと詰めるのによけい時間がかかる。効率が落ちます。そうならないためには、今までより早く注がなければならないのです」「それから、封をするにも小さなアールのものを封する方が難しいです。失敗品が出てはいけない。製造効率が落ちるとコストに跳ね返ります」
軽量缶で、効率も落とさないためにはビール工場の工夫と努力が欠かせなかったわけだ。
いうまでもないがアルミの空き缶はリサイクルされており、2001年度の業界全体のアルミ缶リサイクル率は82.8%だそうだ。
上記の他、製造工程で新しい技術をとりいれ、環境にあたえる負荷を低減した「aTULC」アルミ缶というのもある。
少し話題が変わるが、ここで、缶ビールについて友人が話していた疑問を保坂さんに聞いてみた。
それは以下のような事だ。
ケースで缶ビールを買う人はご存じだろうが、24缶入りのダンボールのケースを開けると6缶ずつのパックが4つ入っている。あれは要らないのではないだろうか? いきなり24個入れると何か不都合があるのだろうか?
答えは、いきなり24個入れてもよい。その形で出している箱もある、ということだった。
しかしお店で6缶パックとして売りたいところもあるので、現在は上記のかたちで出ていくケースが大半となっているようだ。
でも、スーパーなどでもバラして冷蔵棚に並べているところがある。店員さんは6缶の紙パックをたくさん開けていると聞いたことがあるので、パックの紙くずだけでも相当量になるのではないか。
推定だが、6缶パックの形で店頭で陳列する必要性は10〜20%くらいだろうということだ。それならば、30%程度をそういう仕様にして、残りは6缶パックがない箱にすれば、資源の節約になり、廃棄物の削減にもなるのではないだろうか。
「その事は我々としても感じています。色々と模索・検討しています」とのことであった。
|