2002年12月19日 百木一朗
キリンビール 缶と瓶の地道な努力 第3回
左が軽量化瓶、右が従来のものだ。左はわずかにスリムなのだけれど、わかりますか?
 
ガラス以外にも、ビール瓶すべてをリサイクルしている。王冠栓、ラベルの紙がそうだ。また、ケースは相当長い年月使うが、その後は物流用のパレットに再生されている。

続いて、瓶(びん)の話へ移ろう。

 ビール瓶は工場へ戻されて、また詰め替えられ何度も使われている。これを「リターナブル・システム」と呼んでいるそうだ。しかもビール瓶の回収率は99%(ほぼ100%)だという。大規模に行われているものとしては、リユースのこんなに良い例は、他にちょっとないのではないだろうか。

 保坂さんは語る「これは歴史がそうしてくれたと思うのですが、お酒屋さんが昔から扱ってくれていて、お酒屋さんから買ってお酒屋さんに返すルートがきちんと出来ているのです。
 近頃はディスカウント店とかでちょっとそうでないところもあるのですが、まだその仕組みはこわれていない。お酒屋さんは問屋さんへ戻し、問屋さんから工場へほぼ全部戻ってきています」

 これを維持している仕組みとして、瓶の保証金制度がある。瓶ビールを買うと値段の中に5円の保証金が含まれている。瓶を返すと5円戻ってくる制度だ。飲食店で使われた瓶も、ほぼ確実に返されているだろう。

 ただし、瓶が重いという問題があった。そこで、瓶も軽量化できないかということが研究された。ガラスの厚みを薄くする。薄くすると軽いが弱く割れやすくなる。それを防ぐためセラミックスコーティングをほどこして強度を確保した。
 その結果、重量はそれまでの605gから475gへと、21%も軽くなったのである。
 1993年から導入して徐々に入れ替え、現在は9割くらいが新しくなっているという。

 この軽量化努力は、キリンがこれからも、コストが厳しくなるであろう中でも、瓶のリターナブルシステムを続けていこうという意志の表れだろう。

 軽量化すると酒屋さんや回収瓶を運ぶ人の負担が軽減される。20本入り一箱では、2.6kgの軽減となる計算だ。また、製瓶・ボトリング・輸送においてエネルギーが削減でき、トラックの積載数増加によって、輸送時のCO2・SOX・NOXを削減できる。

 セラミックスコーティングした軽量化瓶は昔のものより少しスリムに見える。内側は昔のままで、ガラスの厚み分だけ、外側は小さくなっているからだ。また、見た目がちょっとメタリック風というか、光った表面になった。「このツヤがあまり好きじゃない。昔の瓶のほうがいい」というお客さんもあるそうだが、冷えて露がついた状態だと違いは余りわからない。傷はつきにくくなった。

 瓶は工場へ帰ってくると、検査をして、充分に洗浄し、ビールが詰められる。検査では傷を詳しく見て、基準以下の約5%は廃棄している。外観的な理由と傷から割れる事故を予防する目的だ。その5%はカレット(瓶くず)にして、瓶工場でリサイクルされる。

(つづく)
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