2003年9月18日 百木一朗
新江州のミックスペーパー・リサイクル  第1回

段ボールの事例。発泡スチロールなどを使わずに緩衝材の役目もはたすように作られた箱です。

 
工場での中川さん(左)
 

リサイクルによいプラダンの条件。
熱溶着やPPの鋲などを使い、すべて単一素材だと純粋にリサイクルできる。

写真下はその例です。

 「段ボールは88%がリサイクルされていることをご存じですか?」と新江州株式会社の中川武司さんが語りはじめました。新江州(しんごうしゅう)株式会社(以下新江州と略す)は 滋賀県東浅井郡びわ町に本社があり、段ボールをはじめ、包装産業資材や情報関連の事業を行っている会社です。

 中川さんは取締役・事業開発部長で「いろいろご紹介したい事業があるのですが、中でも、ミックスペーパーをリサイクルできるシステムを普及させようと、いま取り組んでいます」とのこと。ミックスペーパーとは、分別されていない色々混じった紙ゴミの事です。

 今までになかったシステムだそうですが、その前に、段ボールのリサイクルの事をもう少し詳しく聞いておきたいと思います。
「今は当社も、全体の内で段ボールの比率が少なくなっていますが、日常生活や産業界で段ボールは無くてはならないことに変わりありません。しかし余りにも当り前に過ぎて、超優等生なんやけど、誰も振り向いてくれない、環境に良くてもほめてもらえない存在なんですよ」

「当社は創業が昭和22年で、しだいに段ボールを扱うようになりました。それまで物流に使われていたのは木箱だったんです。
 昭和30年代に入り、物流が盛んになって、青果物、たとえば、りんご・みかん・じゃがいもなど、そして機械の部品も、木箱で運ばれていたのが段ボールに置き換わっていきました。
 森林資源有効活用法という法律ができ、木箱一つの木材で段ボールが幾つもできる、という、現在の言葉で言えば『環境にやさしい』ということになったのです。もちろん当時そんな言葉はまだありませんでした」

 そんな背景から新江州も段ボールを多く扱うようになり、日本のまさに高度成長と共に成長していったということです。

 ところで「通い箱」という物があります。商品を取引先や得意先へ運び、行ってまた帰ってくる。何度も使う箱です。この通い箱に、紙の段ボールでなく、「プラダン」(プラスチック製のダンボール)という耐久力のあるものを使う会社が増えており当社もこれを扱っています。

 ポリプロピレン(PP)でダンボールができていて、それで箱を作っているものです。
 プラダンの値段は紙のダンボール箱の十倍くらいしますが、耐久力は十倍どころではなく何年も使い続けられるから、使う企業さんはコストが少なくてすみ、環境にも良いのです。

「そして、プラダンも勿論リサイクルできます。ここで大事なことがあるんですが、プラダンを作るのにホッチキスの親分みたいなので止めます。ところがリサイクルするとき金属が混じっていると良くない。他の樹脂も良くない。純粋に一種類の樹脂が良い。

 そこで、プラダン同士をくっつけるのに、熱溶着といって熱いもので溶かしてくっつけたものを勧めているんです。
 でも、値段がちょっと高くなります。ホッチキスだったらドッドッドッドッと速く出来るが、熱溶着はギューーッ・ギューーッ、って、こんな感じで能率では今ひとつなのでコストがかかる。

 でも、リサイクルを考えたらこれを採用してほしい。一般生活者の方は知る必要ないでしょうけど、産業界で量が多いと、少しの差でも影響力は大きいのです。 これがプロの世界、玄人(くろうと)の世界です」

(つづく)
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