2003年10月16日 百木一朗
新江州のミックスペーパー・リサイクル  第2回
オフィス内で使用される紙の実態。
全体の四分の一だけしかリサイクルされていない。
 
集められたシュレッダーのゴミ、ミックスペーパー
 

作られているトイレットペーパーとティッシュペーパー
(写真はいずれも新江州提供)

 前回で話を聞いた「玄人(くろうと)の世界」は他にもあるんです、と中川さんは言います。
「たとえば、名刺の隅に『再生紙を使用しています』と印刷しておられる名刺がよくあります。また、会社内で不要になった紙を分別することを社員に徹底し、回収している。これは立派なことではありますけれども、素人(しろうと)受けしやすい、わかりやすい話です。表の世界と言ってもいいでしょう。ただ、玄人の目からすると、それだけでは済まないのです」

「紙を分別してリサイクルしている。と言われますが、こういうことがあります。ある企業に投入された紙の量全体を100としたとき(左の図)本当にリサイクルされているのは25%くらいなのです。
 というのは、リサイクルにしたくても対象外になる禁忌品と呼ばれる種類の紙が25%ある。そして残り50%は機密書類で、情報もれを防ぐため、やはり回収には出さない。焼却処分が多いようです。

 つまり、リサイクルされるのは全体から言えば、四分の一だけなのです。

 きちんと紙を分別しているような会社で、やっと25%くらいまで行っていて、機密書類等でない差し障りのない紙ゴミだけを対象に『全部分類している』と言っておられる。これは表の世界です。
 皮肉っぽい言い方をすると『おたく達、75%はリサイクルしてませんよ!』という事になる。裏で、燃やしています。企業さんの立場では、そうしなければしようがないから、そうされているのですが」

「ここからが僕の話です。僕のビジネスではあるんですけれども、大変良いものだと思うのでお勧めしたいです」
「さきほど言った中で、75%に相当する紙ゴミも全部引き受けてミックスペーパーを再資源化できる、というシステムです。これを企業さんや自治体さんに導入してほしいと売り込んでいるわけです。名称は『MSリサイクルシステム』と言います。

 機密書類をシュレッダーにかけたものでもOK。禁忌品もOKです。
 シュレッダーくずは、紙の繊維を切ってしまって再生には余り良くないので、通常は製紙会社では断られるものなんですが。

 それをトイレットペーパーに再生します。そして紙ゴミを出した企業に、トイレットペーパーを購入してもらいます。地味な話で玄人受けしかしませんけど、とても重要なところです。使ってもらえないと、回っていかないわけです」

 そうでしょうね。再生しても安定的に売れないとダメだ。そこが難しいわけですね。
しかしトイレットペーパーだとそれをもう一度、紙にリサイクルはできないのでしょう。普通の紙に、多少は質は落ちても、出来ないのですか?
「技術的には可能ですが、コストが合わないなど課題があって、まだ出来ていません。例えば封筒にするなどを提案はしていますが……。

 それでも、通常だと門前払いをくらうような紙ゴミも、ほとんど全部うけいれる努力をしている。歩留まりが70%くらい、ということはミックスペーパー紙ゴミが100kgあったとしたら70kgのトイレットペーパーが作れるっていうことで、これを実現しているだけでも大変な事ではあるのですよ。」

 それは理解できます。それから、紙ゴミを出した企業が、それから出来たトイレットペーパーを使うというのは、社員の意識としても良いでしょうね。

「古紙の入ったトイレットペーパーなんか嫌だって言う一般の方も多いらしいですが、私たちのリサイクル品も、そんなに質の悪いものではないですから、まぁ純白のフワフワではないですけれど、この契約をしてもらっている企業さまにはこれを使ってくださいよと、義務のようにですね、しているわけです。それが循環型社会ですよ」

(つづく)
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