2003年11月13日 百木一朗
新江州のミックスペーパー・リサイクル  第4回

再生のために集積されたミックスペーパー

 
紙コップなどから再生して作った、バッファローズの紙メガホンとタイガース応援うちわ
 

リヴァ−ジンパネルを使用した展示例

「 それと、先ほども言いましたように、循環させるということは、再生して作ったものは、使ってもらうようにしなければいけない。作った会社で在庫になってしまう。これが循環型社会構築のネック中のネックになるところだと僕は思っています」

「例えば町内の古紙回収の活動とかありますね。そこで一生懸命やっている人がいる一方で全然協力しない人もいる。
 でも、その人が再生紙のティッシュペーパーとかトイレットペーパーを使ってくれていたら、ちょっとくらい質がわるくても使おうとしていたら『その人はグウタラかもしれんけど、ええ人や』って僕は冗談めかしてお話することがあるんです。古紙の回収は熱心でも、再生の黄色っぽいティッシュは嫌と言う人よりいい人です」

 そうですね。売れないから、もう作れないっていうことで循環の流れが止まってしまいますね。だから使ってもらえるようなものが何か、ということになるのでしょうか。

「専門用語になりますが、チャネル開発をする必要があります。用途開発と言ってもいいですね。売れるような道筋をつくってあげないといけない」
 「一つ例を言いましょう。大阪ドームで試合が終わるとたくさんの紙コップのゴミが出ます。その紙コップを再生して、近鉄バッファローズの紙メガホンを作った会社があるんです。
 そして、阪神タイガースさんへも、っていうことで(笑)、紙コップなどをリサイクルし、板紙にしてタイガースの応援「うちわ」を作りました。喜んで使ってもらえるだろうと。普通のうちわは取っ手がプラスチックですが、取っ手のところも全部が紙で出来ています。だから、はじめにお話したプラダンと同様に、単一素材ですから、それがまたリサイクルできます」

「ここでは、紙コップのほかに、酒パックから再生したものを使っています。酒パックは牛乳パックと同じような形ですが、再生しにくい要素があります。牛乳パックは紙とフィルムでできているのに対して、酒パックのほうは紙とフィルムとアルミを使っています。

 先ほどミックスペーパーとお話してきたのは、主に事務関係の紙ゴミなんですが、酒パックを作っている印刷工場からもゴミが出ているわけです。工場損紙(そんし)と呼ばれていますけれども、印刷ミスとか、余ったものとかですね。そんな製造中に出るゴミというのも余り知られていませんが多いものですよ。アルミを分離するなどで手間がかかるから、今まで全部が産廃になっていました。


 でも、もったいないから使いたいと考えた会社があった。というのは酒パックや牛乳パックが、実はとても良いパルプを使っているんです。針葉樹のヴァ−ジンパルプで、これは広葉樹のパルプより強くて固いです。だからしっかりした板紙が出来ます。

 これを、新江州の提案は「リヴァ−ジンパネル」と言いまして、この板紙で段ボールシートを作る。これが展示パネルに使えるのです。
 展示会で大量に使用されるパネルにこれを使ってもらえます。展示会っていうのが、これまた問題なんです。環境展…などの現場で、イベントが終了してお客さんが帰ります。業者が撤収します。そんな現場をご覧になったことがありますか?
 ものすごいゴミの山になるんですよ」

 そうですね。イベントの撤収は早くしなければいけませんからね。壊して、ゴミに……なりますね。パネルは普通は軽いプラスチックでしょう?

「そうです。材質は、スーパーで魚や野菜を包んでいるトレーと同じものです。
 資源を循環させよう、とか謳っているパネルそのものが、イベント終了後には大量の廃棄物となってしまいます。 環境のイベントでそれが起こるのは皮肉な事だと思いませんか。

 リヴァ−ジンパネルに置き換えてもらうと、何度でもリサイクルできます。段ボールと同じ扱いで再生されますから。
 これ、僕は、今後行われる万博とかにとっても良いと思っているんですよ」

 それはイベントが終わってからで一般の目に見えない所ですが、影響は大きそうですね。

「これも、玄人(くろうと)の世界ですけれど、『舞台裏』から見ても本当に、資源循環する世の中になると良いと思います」

(この項おわり)
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