2002年4月25日 百木一朗
ヨシ紙がヨシ 第8回

----- 伴 一郎さん -----
   

名刺のパンフレット。

 
 
布製のバッグとペンケースなどの商品
 

 大阪の企画会社・伴ピーアールを経営する伴一郎さんの取り組みはまたちょっと違います。一般のパルプにびわこのヨシを約10%加えた紙を作り、名刺やビジネス用途に普及させようとしている。「レイクパピルス」と愛称をつけ、これを使った名刺の下隅には『この名刺一枚で琵琶湖の水10リットルを浄化したことになります』とプリントされています。

 伴さんの口癖は「川上と川下が一緒になって」です。「近畿1400万人の大切な飲み水を供給しているのはびわこ。びわこの水質汚染は滋賀県だけの問題やない。川下の僕らも大いに関係あるんです。だから大阪の人間もアクションを起こさなければ」という。そして自らのビジネスにちゃんと成り立たせています。名刺に上記の文があると、名刺交換のとき話題になる。環境について肩肘張らずに意識を広げるツールにできればと考えて開発しましたと語る。

 実はヨシに思いを寄せる関係者で僕の今まで会った人の中には、レイクパピルスの事を次のように言う人もありました。「たった10%でしょう……」「見た目があまりヨシ紙らしくなくて好きになれない」「水10リットルを浄化、うんぬんというのは少し誇張した言い方では……?」

 しかし、伴さんは、本当に多くヨシを活用しつつあることに胸を張っています。開発段階では20%やもっと多くヨシを含んだ紙も作ってみた。しかしビジネスに使う名刺としてはザラザラしたように見え、抵抗があって採用されにくいのです。10%だとごく普通の名刺用紙に見える。たとえ10%でも多く売れれば使用量は増えるから良いのではないか。採用してもらうため名刺印刷代(用紙代含む)も百枚が1900円から、と、一般の名刺より若干高いが抵抗ない範囲に努力しています。

 さらに用途を広げようと、次に伴さんはヨシ紙を転用して布つくりにも挑戦しました。写真のようなトートバッグやペンケースなどで、これも説明がなければ、普通の布バッグにしか見えない。伊藤忠商事の関係会社と共同で開発、上記の紙を細い短冊状に切り、よりをかけて紙の糸のようにした。それを混ぜて織るという方法で布にしたわけです。これを買い物袋に採用してもらう取り組みも行っています。「すると商品袋を使わずに済んでこちらでも環境にいいでしょう!」伴さんはこのように持ち前のアイデアと行動力でヨシ活用を実践しています。

(この項おわり)
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