日本の元気なきずなプロジェクト

第2回  「顔が見える」へのこだわりが「継続の力」
2012年9月28日 菱川貞義

 滋賀県大津市の中心部にある浜大津は、ひと昔前までは交通の要として栄えてきました。そんな活気を現代に取り戻す活動として注目されるのが、京阪電気鉄道浜大津駅前で毎月第3日曜日に開かれている「浜大津こだわり朝市」です。

 

 「浜大津こだわり朝市」は、「生産者と消費者の顔の見える関係」にこだわる市民とNPOが運営主体となって、大学や行政、企業等とつながりながら、平成15年10月に誕生しました。その思いと地道な活動が、 今日まで多くの「こだわり生産者」と「こだわり消費者」をつないできました。
生産者自身がお店に立って販売することが出店の条件にもかかわらず、遠くは沖島や朽木からの出店もあります。
 たくさんの出店者のなかから数名の方からコメントをいただきました。

くろだ農園・黒田一成さん
「私の野菜はこだわりの部分が大きいのですが、ここのお客さんも安全とか自然指向とか、こだわっておられる方が多いので売りやすいです。それと、直接お客さんと出会えることで、つながりができるのがありがたいです。」

星さんちの手作りもろみ納豆・星勝子さん
「国産、無添加にこだわっています。リピーターの人がほとんどで、地元の方も多いです。ここの市はとてもコミュニケーションがとりやすいです。地域にしっかり定着していて、このまま続けられればいい、と思っています。」

ハチフジ・藤本卓矢さん
「私は日本ミツバチにこだわっています。ほかの朝市と比べてこだわったお客さんが多いので、やはりリピーターがほとんどなのですが、新しいお客さんも次々増えているのがすごいと思います。」

朽木とちもち保存会・河合広茂さん
「ここで、こうして餅をついていることがこだわりです。栃餅のおかげで、こんな歳ですけど、仕事があってありがたいです。ここの朝市のお客さんは毎年どんどんよくなっているので、遠くても苦になりません。体がもつ限りやっていきたいです。」

小川酒店・布施明美さん
「うちは9年間、無遅刻・無欠勤で、近江の地酒の試飲販売にこだわっています。今日は、安井酒造場の安井利晴さんに来てもらっています。リピーターも多いですけど、口コミがすごいんです。ここのことを知って北海道から来てくれた人もいます。」

 浜大津こだわり朝市は、来年の秋に10周年の節目を迎えます。第1回開催当初から、まず何よりも大切にしているのは「売り手と買い手の顔と顔が見える関係」です。

「生産者に自分の生産物をお客さんと直接対話しながら販売してもらう」という、ひと昔前までは当たり前だったことを、あえて言葉にしています。

 この主張は、多くの生産者と消費者に受け入れられ、しっかりと地域に定着しています。また、長く続けているなかでますます重要性を増している、と朝市の運営組織「浜大津朝市運営委員会」代表の末富孝也さん(68歳)は手応えを感じながら、次のように熱い思いを語りました。

「顔と顔の見える関係をテーマに朝市をはじめてからも、ますます日本や世界は混迷を深めていて、多くの人がこれから先に何を頼りに生きていけばいいのか、不安を感じる時代となっています。

答えはまだ、見つかりません。けれど、人と人とのつながりの大切さを軽視する声は、もうどこからも聞こえてこないのではないかと思います。安心・安全、地産地消など、食に関する重要なテーマはいろいろありますが、実はそれらはすべて、顔と顔の見える関係のなかに当然の条件として含まれているものです。」

「今日食べる物、使う物を作ってくれている人たちとの個人的な出会い。それは消費者にとって、ただ単に物を買うこと以上に大きな価値があります。

以前は無自覚だった“つながり”を、今度は自覚を持って、多様な価値をそれぞれが感じ取りながら、取り戻していく時代になっていくのではないでしょうか。」

 

 

 

 ほかにも、たくさんの魅力的出店者が目白押しです。ぜひ、浜大津こだわり朝市の会場でお出会いください。

浜大津こだわり朝市は毎月第3日曜日に開催しています。

【お問い合わせ先】
浜大津朝市運営委員会 事務局
電話:077-524-7826(金・土・日)、077-533-1941(月〜木)
http://kodawarimarket.com/

 


つづく